Webでアプリケーションを実行することには、「機種とOSの制約を取り払える」という大きなメリットがあります。Webは、コンピュータがTCP/IPネットワークに接続され、そこでWebブラウザ(以下「ブラウザ」)が実行できれば、どのような機種、どのようなOSでもアクセスして閲覧できます。
- 機種変更時の利点 -
従来のアプリケーションは、特定のOS上で動作することを前提に作られていました。しかしWebアプリケーションでは、そのような制約はなくなります。
これまでは、社内のコンピュータを一斉に入れ替えようにも、過去に作成し現在も稼働してるたくさんのアプリケーションを使い続けようとするなら、まったく異なる機種やOSに乗り換えることは不可能でした。
実際、汎用機との絡みでオフコン(オフィス・コンピュータ)を多数稼働させていた組織が、パソコンを業務に導入する際に一番悩んだのが「過去のソフトウェア資産(プログラムとデータ)をどうやって移し替えるか」ということでした。
Webアプリケーションなら、そういった機種やOSの変更時にも、データとアプリケーションを移し替える必要はなくなります。アプリケーションが変更されないため、基本的な操作方法も変わりません。ユーザー教育に割くコストも削減できます。
- 開発と保守の利点 -
アプリケーションに関しては、その開発と保守の労力も削減できます。
Webアプリケーションではアプリケーションもデータもサーバー側に保存して管理するため、OSに依存した従来のアプリケーションのように、各クライアントにアプリケーションをインストールして回る必要がありません。
アプリケーションの更改(バージョンアップ)時にも、サーバーに保存されたアプリケーションだけを対象とすればよくなります。
特に、最近のコンポーネントを多用したアプリケーションで、データベース接続のコンポーネントがバージョンアップされたような場合、クライアント数が多ければ、アプリケーションの再配布に伴う労力は相当なものとなるでしょう。Webアプリケーションでは、その労力を大幅に軽減できるのです。
- もちろん欠点もある -
これまで、閉ざされたネットワーク内で稼働させるアプリケーションと言えば、VBなどで開発したOS依存型のプログラムが主流でした。特定のOS(VBならWindows)でしか動作しないという制約はあるものの、OS依存型のアプリケーションには「OSの持てる機能を存分に活用できる」という大きなメリットがあります。簡単に言えば、「高速かつ柔軟なアプリケーションが作れる」ということです。
Webアプリケーションのデメリットは、その裏返しです。先述したように実行環境の壁を越えることはできますが、特定OSの機能を存分に引き出し、複雑な処理を高速に実行する――ということはできません。HTTPプロトコルとブラウザの制約が付いて回ります。
その他にも色々と欠点はありますが、それらは回を追って取り上げることにしましょう。しかしWebアプリケーションには、その欠点を補ってあまりあるメリットがあることも事実です。但し、そのメリットを活かすには、そのための状況が必要です。すべての処理がWeb化できる訳ではなく、メリットを活かせる処理をWeb化することが大切です。
図3:WebアプリケーションはOSや機種の垣根を越える
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