演算と計算
演算子は数値の演算を指示するための記号です。『演算』とよく似た言葉に『計算』があります。両者の違いを少し考えてみましょう。
似ているようで微妙に違う
広辞苑(新村 出・編/岩波書店・刊)では、両者は次のように説明されています。
・演算
数式の示す通りに所要の数値を計算すること。
・計算
演算をして結果を求め出すこと。
似ているようで微妙に異なるニュアンスです。よく読むと、『演算』の説明中に『計算』という語が入っており、『計算』の説明中に『演算』という語が入っています。そのため、文字通り正直に解釈すると堂々巡りになってしまいます。
プログラミングとは異なり、人間の使う言語の定義にはこういった不明確な側面があります。まさに言葉は生き物ですね。
行為と結果のニュアンス
『演算』の説明で用いられている『計算』という言葉は、単純に式に従った計算の行為を行うことだと解釈できます。従って、両者は本質的に同じ意味合いを持っているのですが、
『演算』とは式に従って数値を処理するという《行為》
に着目し
『計算』とは演算で求められた《結果》
に着目しているのだと捉えられます。
このように解釈すれば、式に基づいて値を処理する命令群を『演算子』と呼ぶことにも納得がいきます。結果がどうであるかではなく、演算という行為を指示する命令──ということです。
『演算子』とは言いますが『計算子』とは言いません。逆に『計算式』とは言っても『演算式』とは言いません ※1 。
そこまで言葉の定義にこだわることはないだろう……と、思う人もいるでしょう。しかし、言葉の定義が曖昧なままに仕様設計やマニュアル作りの現場で意思疎通されていることがよくあります。例えば「以上/以下」といった言葉でも、案外勘違いされていたりします。まして、英語のカタカナ表記だらけの専門用語では、誤解の生じる余地も広がってしまいます
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