Webアプリ開発事始 第17回

ASP.NET入門
~Visual Studio .NETでWebアプリケーションを作る
長谷川裕行
有限会社 手國堂

ASP.NETとVisual Studio .NET

ASPは、Windowsの標準Web・FTPサーバーであるIIS(Internet Information Services)のWebアプリケーション実行環境です。現在はASP.NETという名称となり、Visual C++やVisual BasicなどMicrosoft社の他の開発環境と共に .NETの仲間となっています。


- すべての言語を統一環境下で扱える -

.NETは各言語に共通のランタイムを用いるなど、プログラムの開発環境と実行環境を統合的に管理する仕組みで、プログラミング・フレームワークと呼ばれています。Webアプリケーションも守備範囲に入ります。

.NETフレームワーク環境下で動作するプログラムの開発は、Visual Studio .NETで行います。Visual Studio .NETでは、Visual C++ .NET、Visual Basic .NETなど従来のプログラミング言語を .NET対応としたものの他、Visual C# .NETやVisual J# .NETなどの言語が共通の環境で利用できます。

Visual C#は、すでに雑誌や書籍で紹介されているため、ご存じの方も多いでしょう。JavaとC++をミックスしたような言語です。

Visual J#は、本記事の第13回で紹介したように、旧来のVisual J++に代わるJScriptの開発環境で、Visual Studio .NETへ組み込んで使用するアドオンの形で提供されます。Visual J# .NETについては、以下のMicrosoft社のMSDNサイトを参照してください。

  http://www.microsoft.com/japan/msdn/vjsharp/


- 実行基盤は .NETフレームワーク -

.NETフレームワーク環境では、従来のOS依存型アプリケーションもWebアプリケーションも、同じ環境で開発~実行できることが特徴です。

厳密に言えば「OS依存型」という表現は適切ではありません。クライアントのWindows上で動作するアプリケーションもサーバーで動作するWebアプリケーションも、その動作基盤は .NETフレームワーク(.NET Framework)となります。従って、いずれも「.NETフレームワークに依存」したアプリケーションだと言えます。

これによって、アプリケーションがサーバーで実行されるのか、それともクライアントで実行されるのかという実行環境の違いが、なくなってしまったのです。

ASPはIISが稼働している環境――すなわちWebサーバーでWebアプリケーションを読み込んで実行する、サーバーサイドのWebアプリケーション実行環境です。ASP.NETでは、Webサーバー側の .NETフレームワーク環境下でWebアプリケーションが実行され、その結果がクライアントに送信されます。

従来のASPでは、言語にVBScriptとJScriptを使用しましたが、ASP.NETではVisual Basic、Visual C++、JScript、Visual C#、Visual J#――と、Visual Studioで利用できるすべての言語が使えます。また、従来はスクリプト型言語で記述されたソースコードをインタプリタで解釈してアプリケーションを実行していましたが、ASP.NETでは中間コードにコンパイルされたプログラムが実行されます。


- デザインからコーディングまで共通 -

ASP.NETの最大の利点は、強力なユーザーインターフェイスのデザイン機能でしょう。Visual Studio .NETの統合された開発環境で、Visual Basicのフォームデザイン機能と似た使い勝手の「Webフォーム・デザイナ」を使って動的なWebページをデザインできます。

フォーム上にはテキストボックスやリストボックス、コマンドボタンなどのコンポーネントを貼り付けることができ、さらにタイマーやデータアクセスなどのコンポーネントも利用できます。これらをWebフォーム上に貼り付け、プロパティを設定して画面のデザインを行い、ユーザーの操作などに対するイベント処理を記述して動作を決めます。

入出力のためのユーザーインターフェイスやデータベースの接続など、必要な機能はほとんどすべてコンポーネント化されているため、従来のようにたくさんのコードを記述する必要はありません。

これらコントロール群は、どの言語でどのような種類のアプリケーションを作る場合も、共通したものが使われます。Visual BasicでもC++でも、またクライアント・アプリケーションでもWebアプリケーションでも、同じ機能を持ったコントロールを、同じ要領で(言語による記述方法は異なりますが)操作できるのです。


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デザインからコーディングまで共通
ASP.NETによるWebアプリケーションの開発
コントロールとイベント処理
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