では、先に掲げた2つの問題「ユーザーはどのような人たちなのか?」「我々は、ユーザーに何を伝えたいのか?」について、まず全体的なところから考えていきましょう。この2つの問題=テーマは、全体の設計から個々の機能設計に至るまで、ずっと付いて回ります。
- 提供したい情報を列挙する -
Webサイトを作る(またはリニューアルする)場合、最初に掲載するコンテンツをリストアップし、それらをページ単位に分類することになります。企業が顧客向けのインターネット・サイトを作るなら、
・商品(製品あるいはサービス)の紹介
・商品(製品あるいはサービス)のサポート情報
・会社概要
の3項目は必須でしょう。その他に、
・採用情報
・スタッフ紹介
・商品検索
・通信販売
などの項目が追加されるかもしれません。また、
・マニュアルや関連ソフトのダウンロード
・顧客サービスのための記事・読み物
などが追加される場合もあるでしょう。
- 項目を分類する -
これらの項目は、さらに細かく枝分かれします。実際には、どの項目が大分類で、どの項目が最小分類となるのか、項目を列挙する段階では不明なことが多いものです。そこで、まず、サイトに必要な情報を取りあえず列挙しておき、それらをカテゴリ別に分類していくことになります。
あるカテゴリがさらにその上の大きなカテゴリの中に吸収されたり、どのカテゴリにも入らない項目や、複数のカテゴリにまたがってしまうような項目があるかもしれません。それらをうまく整理し、最終的には以下のような階層構造を形成するのがよいとされています。
トップページ |
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大分類 |
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中分類 |
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小分類 |
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大分類 |
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中分類 |
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小分類 |
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大分類 |
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中分類 |
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小分類 |
しかしこの階層構造、本当に信頼できるのものでしょうか? 階層構造という考え方は、コンピュータのディレクトリ(フォルダ)構造でおなじみです。ファイルの内容や利用目的によってフォルダの階層を作成し、適切なフォルダにファイルを保存する――のが「正しい保存方法」だと言われています。
けれども、例えば「新製品開発プロジェクト進行表.xls」というExcelの文書ファイルを探そうとして、「プロジェクト\文書」「新製品開発\企画会議\Excel」「新規プロジェクト」などなど、目的のファイルが<保存されていそうなフォルダ>を次々と開いた経験のある人も、少なくないはずです。かくいう私も、あまりに細かく分類しすぎてフォルダ階層構造の迷路に迷い込み、結局スタートメニューから「ファイル検索」で見つけだしたことが何回かあります(恥ずかしながら……)。
- 階層構造が最良とは限らない -
階層構造は、少なくとも前世紀の西欧科学では、思想の根幹となるものでした。そして現在でも、その思想は多くの分野に受け継がれ、実用的に機能しています。例えば会社などの組織構成や書籍や論文の構造も、すべて階層構造がベースとなっています。
しかし、道路工事の件で市役所の道路課に電話をかけると「その工事は水道部の担当です」と言われたり、論文を読んでいて「この項目はもっと後の『考察』に入れるべきじゃないかな?」などと思ってしまうこともよくあります。
つまり階層構造は「対象となる全体が、それを見る(あるいは扱う)誰にとっても正しく分類されている」ことが大前提となるのです。多くの場合、組織の構造は組織内部の人間――それも全体を管理する立場の人間――にとって分かりやすく作られています。市民は「道路の問題」と思っていても、役所の方では「上水道なのか下水道なのか、道路の補修なのか、それとも交通法規に絡む事業なのか」によって異なる分類となる訳です。
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